アルカリ電池とマンガン電池のコスパを比較してみる

最近は、充電式の電池(2次電池)を使う機器が増えてきていますが、まだまだ乾電池を使う製品も多く、100円ショップでも、数本組のパックが数多く販売されています。

「電池はPanasonicでないと寿命が・・・」という声もあるのですが、単3アルカリ電池でいうと、廉価品とは2倍ほどの価格差があるので、私は、基本的には、単価の安いものを使っています。

実験に使った電池銘柄

安価な外国製品と言うものの、国内メーカー品の多くは外国製造やOEM品です。 そして、無名のメーカー品であっても、それらすべてが基準品質は保証されているので、私はもっぱら「100均派」です。

たとえば、ダイソーさんの乾電池コーナーをみても、多くの銘柄の乾電池が並んでおり、中でも、「単3・単4電池」の種類が豊富で、100円(税別)で、単3で言えば、アルカリ乾電池が4-5個、マンガン黒乾電池は6-8個というパックで販売されていますから、うまく使い分けるとお買い得感が大きそうなので、ここでは、アルカリ乾電池とマンガン乾電池の価格と寿命などから、実験を交えて乾電池のうまい使い方を考えてみます。

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電池の優劣や寿命時間の評価は難しい

パナソニックさんの資料に、単3アルカリによる寿命曲線の例があります。

寿命曲線(パナソニックさんの資料)

これらは、一つの実験なので、使い方によって、こうなるというのではないので、実用的なものとは言えませんが、この例では、電池寿命は0.8~0.9Vになったときを寿命として、電池の電圧低下を実験したものです。

ただ、こちらの記事でも取り上げたように、近年では、0.9Vまで使える製品は少ないですし、似たような用途の製品であっても、ちょっとした使い方の違いで変わるものだと考えておかないといけません。

電圧降下の傾向は、このグラフにあるように、使用し始めに急激な電圧降下があるので、これには、できるだけ容量に余裕のある大きいサイズの電池を使うといいのですが、現実的には、電池の大きさを選べない場合がほとんどなので、最適化が難しいと言えます。

乾電池は、使えば劣化し、短時間では、電圧が回復しません。 また、電流をたくさん消費すると寿命が短くなるのは防げないのですが、おおよその交換時期は経験的な事も含めて、予想不可能ではありません。

【蛇足ですが・・・】  最近の機器は、「定電圧回路」が組み込まれており、一定の電圧になると、電池交換マークなどが出て、電圧低下の影響を避ける工夫がされています。

それもあって、電池交換の電圧が高めに設定されているものも多いのですが、その反面、機器部品が良くなって、消費電力が抑えられていることで、かなりの長時間使用ができるようになっています。

そして、びっくりするのですが、近年の機器は、1.3Vになれば電池交換サインが出て使えない機器もたくさんあることもあり、一般的には、単純に電池の優劣や寿命判定を数値化するのは結構難しいようです。

しばしば、「電池は国産でないと・・・」とか、「パナソニックは最高・・・」ということなどが聞かれますが、使用条件が変われば、寿命時間が変わる・・・という前提でこの記事をお読みください。

私は、電池に使用開始日を書き、交換時に電圧を測って寿命予測をします

機器や用途によっても、電池の種類によっても寿命は変わるのですが、私は、電池交換の際に、交換日にちを書いておくようにしていて、更に、使い終わった電池の電圧を測って、大まかな寿命をみるようにしているのですが、これで、結構、寿命推定ができます。

ともかく、デジタルプレーヤーや壁掛け時計では、1.4Vになると電池交換時期ですし、LED電灯は、1.1Vに電圧低下すると暗くなり、DCモーターも、0.5Vになっても回っているけれども、電圧低下とともに回転が遅くなっているということは会見してそれを意識しておれば、一律に「**Vが電池の寿命」と決めるのは難しいと認識できつと思います。

それを意識するには、電池交換の日にちを書いておき、さらに、電池交換をしたときの電圧を測っておき、前の使用開始日が書いてあれば、寿命をイメージができますので参考にしてください。

電池が大きいほど、また、マンガンよりもアルカリが高コスパ

乾電池の国内トップメーカーの「パナソニック」さんのHPに、乾電池に関する「技術資料」が掲載されています。(詳しく知りたい方はパナソニックさんのHPをご覧ください)

この資料からわかるように、乾電池の基本性能は、体積の大きい乾電池のほうが、また、マンガン電池よりもアルカリ電池のほうが長持ちします。

パナソニックさんの技術資料

①使用する時の電流が大きいと、寿命が短くなる
②サイズが大きくなるほど長持ちする
③アルカリ電池のほうがマンガン電池よりも長時間使用できる

などがグラフで分かるのですが、もちろんこのデータも、連続使用した場合の実験ですので、見方に注意が必要です。

たとえば、さらに比較しやすいように、下の電流量と使用時間の値を読み取ったところ、電池の大きさやアルカリとマンガンの違いが見えてきます。

パナソニックさんのデータによる寿命比較グラフから読み取った寿命時間

概念的な見方になりますが、100円ショップの安価な乾電池であっても、同じサイズのアルカリとマンガン電池では、アルカリ電池のほうが2倍以上の長寿命・・・と考えていいでしょう。

流す電流量別の寿命倍率では、マンガン電池に比べて、単1では2倍以上、単3では3倍以上にアルカリ電池のほうが長寿命で、サイズの大きさが大きくなれば、寿命には格段の違いが出てきます。

そこで、単1どうしで、アルカリとマンガン電池のコスパを比較すると、ダイソーさんの販売単価では、単1アルカリ電池1個が100円(ここではすべて税別)に対して、単1のマンガン電池は2個が100円(最近は、3個100円のものは見当たらない)なので、単価ではアルカリ電池がマンガン電池の2倍であっても、寿命が2倍以上なので、やはり、アルカリ電池のほうがコスパが優れていることになります。

単3でみてみると、もちろん、パックの本数によっても、使用条件によっても変わるのですが、アルカリ電池(4本パック)とマンガン電池(6本パック)では 1.5倍の価格差であっても、定電流で使用する場合の寿命は2.5倍なので、この場合もアルカリ電池のほうがお買い得ということになります。

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通常の製品では、機器(器具)ごとに、使える電池のサイズは決まっているので、電池のサイズは選択できないのですが、一度に多くの電流を流す場合は、できるだけ大きな電池でアルカリ電池の単価の安いもの(パック本数の大きいもの)を購入すればいいということになります。

ただし、メーカーが変われば品質差によって違いが出るかもしれません。 しかし、それはあるかもしれませんが、現在は、どんな乾電池でも、基準品質は満たしていますし、私の経験では、これまでに、新品の乾電池で問題があった商品はありませんので、わたしは、「安物買い」に徹しています。

しかし、持続時間などで勝負をしなくてはならない用途であれば、コスパを気にしていられませんから、この場合は、その条件で試験して比較するのは無駄ではないでしょう。

ともかく、アルカリ電池のほうがコスパが高いとなると、マンガン電池の出番が無さそうですが、現在も、マンガン電池もたくさん店頭に並んでいます。 単価以外に、何か理由があるのでしょうか?

マンガン電池は電圧回復能力が高い…には、どうも疑問あり

一般的には、『マンガン電池は、小電力時の回復能力が高い』といわれています。 しかし、実験したところ、マンガン電池の完勝ではなさそうです。

実験に使った電池銘柄 ダイソーさんの2種類の電池を使用して実験

どんな電池でも、負荷をつないで電流を流すと、徐々に電圧(起電力)が低下していきます。

そこで、電池の大きさに見合った、同じ電流量で比較すると、使用したときの電圧低下の大きさは、電池容量の大きいアルカリ電池よりもマンガン電池のほうが大きくなります。

そして電流を流すのをやめると、アルカリ電池もマンガン電池も、徐々に電圧が回復していきます。

その時、回復のスピードはマンガン電池のほうが早いのですが、マンガン電池は、電圧低下が大きいので、以前の電圧に近づいていくのに時間がかかってしまって、電圧の回復は、見かけでは、アルカリ電池のほうが電圧回復していることがわかりました。

つまり、使ったときに電圧降下が少ないほうが優位ということから、電流容量が大きいアルカリ電池が優れている・・・という結果です。

言い換えれば、電圧低下を少なくすれば、長く使える・・・ということのようです。

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使用時の電圧低下を抑えると長持ちする

小さなDCモーターを回したときの消費電流は150mA程度と、単3電池では、少し電流量が多い感じですが、それを想定して、その電流量で流す時間を変えたときの電圧降下程度や回復状況を調べたところ、下のグラフのようになり、結果をまとめると、

①通電時間の長さとともに、電圧降下が進む(アルカリもマンガンも)
②使用後の電圧降下はアルカリ電池のほうが小さい(つまり、アルカリのほうがタフ)
③電流量が多いほど電圧が低下が大で、元の電圧までは回復しにくい(どの電池も)
④電圧回復速度はマンガン電池が早いが、電圧低下量が大きいので、電圧回復はアルカリのほうが優れる
⑤長持ちさせるためには消費電流量を小さくする

・・・などのことがわかります。

つまり、総合的な評価としては、使用したときの電圧低下が少ないアルカリ電池のほうが高性能です。

マンガン電池は、電圧回復力が大きいので、休止させると長持ちすると言われていますが、少し大きな電流を使って電圧低下させると、たとえ回復力が大きくても「追いつかない」という結果でした。

つまり、「マンガン電池は回復力が高い」というのは、非常に消費電力が小さい場合だけで、通常の使用では、アルカリ電池を使うほうが長持ちするということがわかります。

通電時間と回復の様子

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もう少し過酷な条件で調べてみます。

前の実験では、消費電力量が大きいほど電圧降下が進むことがわかりました。

そこで、電流の大きさを変えても、同様の傾向があるはずですので、通電する抵抗の大きさを変えて、20Ω(電流量は、70mA程度で比較的少ない)、10Ω(前回と同じの140mA程度モーターを回すときの電流量)、5Ω(単3では、大きすぎるくらいの、240mA程度の電流量)・・・で、各6分間電流を流したときの電圧降下の様子や回復過程を見ました。

(注)単なる「実験」ですので、若干の不正確さや問題点は了承ください。

その結果は、ここでも、

①流れる電流が多くなると、電圧の低下が大きくなる(アルカリもマンガンも)
②アルカリ電池のほうが電圧低下が少ない
③少し電流量が大きいと、1日(24時間)程度の放置時間では、元の電圧までは回復しない

・・・という結果でした。

通電量と電圧の回復推移

この実験の、70mAで6分間使用する・・・という、比較的定電流の条件でさえも、単3電池には大きい電流かもしれませんが、ともかく、やはり、使用後の電圧低下の少ないアルカリ電池に軍配が上がります。

つまり、ここでも、アルカリ電池のほうが総合性能が高いといえます。

そうなると、寿命が短い「マンガン電池」は、今後は消えゆく運命のはずですが、現在も販売されていて、生き残っている理由は何なのでしょうか?

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電池は単価で選んでもコスパでの外れは少ない

ダイソーさんの 単3乾電池 でみると、最安値のパックは、「アルカリ5本、マンガン8本で100円」というパックで、最近は、単3のアルカリ4本パックとマンガン6本パックが多いようなので、それで単価をみると、税別で、アルカリは100円/4本=@25円、マンガンは100円/6本≒@17円 の単価です。

そこで例えば、「子供さんが遊ぶモーターで動くおもちゃ」で考えてみましょう。

ともかく、子供さんは、動かなくなるまで遊んでいますので、毎日2本の単3を使いきりで30日間毎日、新品の乾電池2本を使う場合を考えると、アルカリとマンガンでは、(25-17)円x30日x2本=480円 の差がでます。

子供さんは、おもちゃが止まるまで遊ぶので、マンガン電池が少々使用時間が短いと言っても、単価の安いマンガン電池を使うことは安上がりで、そうするとマンガン電池の優位性がでてきますね。

また、1日1回程度しか使用されない「玄関チャイム」では、押した時に大電流が流れるとしても、約2秒で仕事が完結するので、そのような使い方では、ほとんど電圧低下も落ちないので、このような間欠用途であれば、マンガン電池でも問題なく使えるでしょう。

つまり、電力をほとんど消費しなければ、単価が安いマンガン電池を使うのがコスパの面で有利なので、マンガン電池が消えてしまわないのかもしれません。

小学校で作ったマンガン電池は消えていく運命に

昭和年代中期の私の年代の方は、小学校の工作で、炭素棒の周りに二酸化マンガンの粉を亜鉛の缶に押し込んで、塩化アンモニウム液を流し込んで「マンガン乾電池」を作ったのですが、結構楽しかった思い出があります。

アルカリ電池は、マンガン電池と形状は同じでも、構造は違います。

特に、電解液が水酸化ナトリウムの強アルカリで危険ですし、構造も複雑ですので、多分、最近の小学生では、理科工作でアルカリ乾電池を作ることはなさそうです。

また、近年の乾電池製品は、品質も良くなっていて、液漏れして機器を痛めることもほとんどなくなりました。

そして、製造メーカーごとの電池性能の差はあるのでしょうが、安価で1本あたり30円程度以下で購入できるアルカリ電池の品質は決して悪いものではありませんから、マンガン電池が、コストのやすさで使い道があるといっても、マンガン電池の需要は増えないで減る一方になるでしょう。

マンガン電池は、赤・緑・青という色で区分した品質規格があるのですが、現在では、赤とその高級品の黒以外のものは見ませんし、赤もほとんど見ることが減って、黒色が標準品質になっていますから、この流れでは、きっと、マンガン電池は近い将来には、消えていく運命ですから、何となく複雑な気持ちです。

以上、あまり実用的な実験ではなかったし、大した内容でもいないのですが、どちらがいいかといえば、基本は「アルカリ電池を使う」ようにすればよく、逆に、安いマンガン電池なので生き残っているということを感じていただければ、費用と時間を掛けて実験をやったことも浮かばれます。

最後ですが、電池の電圧チェックには、下のような2000円以下の安価なテスターで充分なので、一家に一台おいておくことをおすすめします。使い方も簡単です。


(来歴)R4.9見直し  R5.8月に誤字脱字を見直し  最終R6.4月に確認

この記事を書いた人
きょくまめ

電気・電子や科学が好きなシニアです。
壊れた電気製品を直して嫌がられるなど、役に立つのか立たないのかわからないことをする趣味があるので、少しでも役に立ちそうなアイデアを紹介する記事を書いていこうと思っています。

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